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「持ち点方式」による部門間のバラつき是正
~評価調整の考え方と活用ポイント~

2026年08月03日

「持ち点方式」による部門間のバラつき是正<br>~評価調整の考え方と活用ポイント~

人事評価制度の運用において、「評価のばらつき」「甘辛調整」「部門間の不公平感」といった課題は多くの企業で共通しています。
特に、評価者研修や考課者訓練の場でも、「評価基準はあるが、最終的に部門ごとの評価分布が揃わない」という悩みは頻繁に聞かれます。
こうした課題への有効な打ち手の一つが「持ち点方式」です。

人事評価のバラつきが生まれる背景

人事評価基準や評価マニュアルを整備しても、評価者ごとの甘辛や評価エラーを完全に避けることは困難です。
評価者訓練によって評価基準の理解を深めても、最終的な評価配分が各部門長の判断に委ねられる以上、「営業部は厳しいが管理部門は甘い」といった評価の不均衡は起こり得ます。

この結果、社員の納得感が低下し、評価面談やフィードバック面談の場でも不満が表面化しやすくなります。
評価制度の巧拙は制度設計だけで決まるものではなく、部門間差をどう調整するかという運用ルールの精度が問われます。

持ち点方式とは何か

持ち点方式とは、あらかじめ部門ごとに評価ランクに応じた評価点の総量を設定し、その範囲内で評価を配分する仕組みです。
たとえば、S・A・B・C・Dなどの評価区分に点数を割り当て、部門ごとに総点の上限や目安を定めることで、評価配分に一定の制約を設けます。

この仕組みによって、部門ごとの評価分布が大きく乖離することを防ぎ、全社的な整合性を保ちやすくなります。
また、評価会議やキャリブレーションの場でも、「どの範囲で評価を配分するか」という前提が明確になるため、調整の議論を進めやすくなります。

部門間バランスと納得性の向上

持ち点方式の大きなメリットは、部門間の評価アンバランスを抑えやすい点にあります。
制度そのものは公平でも、運用段階で部門ごとに評価の甘辛が生じると、被評価者の納得感は損なわれます。

持ち点を設定することで、部門長は一定の制約の中で評価を行うことになるため、評価理由の説明責任がより明確になります。
その結果、評価者・被評価者双方の納得性が高まり、評価面談の質向上にもつながります。
さらに、評価者研修においても「持ち点という条件の中でどう評価判断を行うか」という、より実践的な訓練が可能になります。

営業拠点など業績差がある場合の活用

営業組織や拠点別組織では、業績差が比較的明確に表れることが少なくありません。
この場合、全社一律の持ち点を適用するのではなく、部門や拠点の特性に応じて持ち点に差を設ける考え方も有効です。

たとえば、高い業績を上げている拠点には相対的に高評価を配分しやすいように設計することで、成果に応じた適切な評価を行いやすくなります。
これにより、「成果を出しても評価されない」という不満を抑えながら、部門間バランスと成果反映の両立を図ることができます。

持ち点方式は評価調整方法の一つ

一方で、持ち点方式は万能な方法ではなく、あくまで部門間の評価バラつきを是正するための選択肢の一つです。
実務上は、キャリブレーション、部門平均点による調整、分布規制、標準者比較など、他にも複数の方法が用いられています。

たとえば、部門平均点による調整は、部門ごとの平均点の差を確認し、妥当な根拠が乏しい場合に全体を補正する方法です。
分布規制は、S評価5%、A評価20%などのように評語別の人数割合をあらかじめ定めて調整する考え方で、相対評価の要素を取り入れた手法といえます。
また、標準者比較は、各部門で「標準的にはこの程度の評価になるはず」という人材を比較しながら、部門ごとの甘辛を補正する方法です。

どの方法が適しているかは、企業規模、職種構成、評価制度の思想、組織文化によって異なります。
そのため、持ち点方式だけにこだわるのではなく、自社にとって最も運用しやすく、納得感を得やすい調整方法を選ぶ視点が重要です。

制度だけでなく運用力が問われる

持ち点方式を含むどの調整手法を採用する場合でも、適切に機能させるためには評価者研修・考課者訓練が不可欠です。
評価基準の理解、評価エラーの防止、フィードバック力の向上に加え、評価調整の考え方そのものを評価者が理解しておく必要があります。

人事評価制度の見直しや運用高度化を検討している企業にとって、制度設計と評価者育成は切り離せないテーマです。
自社の課題に合った評価調整の仕組みを設計し、評価者がそのルールを実務で使いこなせる状態をつくることが、納得性の高い評価制度運用につながります。

この記事の監修・筆者

岡野 隆宏
岡野 隆宏人材開発部 マネジャー

広告会社、研修会社にて人事・教育に関する実務を担当。
その経験を基に、現在は「社員のモチベーション向上」をテーマとして主に中堅・中小企業の組織・人材開発を展開中。クライアント企業に対する研修のみならず、外部団体での講演も精力的に行っており、受講者からは「わかりやすく、現場経験に基づいた話に説得力、納得感がある」と定評がある。

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